彼氏の余命を知ってる彼女。



ずっと死神の瞳を見ながら考えていると、死神はゆっくり口を開いた。


「それは──、出来ないことはない」


「出来ないことはない…?」


出来る、とハッキリ言ってるわけでもなく、出来ないともハッキリ言っている訳でもない。


私は小さく首を傾げる。


「…ただ、前にも言った方法もだが、他人の命を他人が身代わりにするのは、この世界では“矛盾”を生む。

なんせ、“身代わり”なんて実質あり得ない事をしているんだからな。

前に言った方法の、他人が他人を帰らぬ人にする場合、君達の言葉を使うと、殺人する人は、される人をあらかじめ決めるはずだ。その決められた人物はその時点で帰らぬ人になると決まり、すぐにデス・クロックが創り上げられる。それはまだこちら側も処理できるが、

他人ではなく、自分自身が自分を帰らぬ人にする場合は、厄介で。…君も知っているんでないかな、自分で帰らぬ人となった場合、その魂はその場を彷徨う事になることを。魂の管理者の我々からするとそれは厄介で困る。

一時的に、助けた者の寿命は延びる。だが、彷徨う魂が助けた命だ、数日と持たない。

つまりはほとんど意味がない、という事だ」


一通り説明してくれた死神は、マントをバサッと音を立て整える。