「奈歩は俺の子供じゃないんだ。亡くなった奈歩の母親は、シングルマザーで俺の患者だった。」




これ以上話を聞くのが怖い。



「俺の患者だった真幸は、末期ガンで、奈歩の将来を心配してた。余命1年の真幸に俺はプロポーズした。」



もういいよ。宗次郎涙が止まらない。




「明日美には全部話しておきたい。真幸との結婚は両親に猛反対されて、未だに実家には帰っていないんだ。」




「病院はお兄さんが継いだの?」




「そうだよ。兄貴とは時々あってるけどな。両親には全く会ってない。真幸に同情して結婚したんじゃない。真幸を愛していた。」




宗次郎はそう言う優しい男だ。




「たけど、真幸が明日美に似てたからって言うのも事実で、俺はずっと明日美が忘れられなかった。ごめん明日美。かなり矛盾してるよな。」




この先の事を考えると、どうしても俺には明日美が必要なんだと宗次郎が言った。




宗次郎の気持ちは嬉しいけど、今直ぐに返事は出来ない。




「時間はいくらでもある、ゆっくり考えて返事をしてくれよ。」




私は頷く事しか出来なかった。



宗次郎と付き合えば、20年前のトラウマから抜け出せるのだろうか。