「ママ、会いたかった。」




奈歩ちゃんは、なべだ、なべだ、おいしいおなべ、可笑しな歌をうたい出した。



ケラケラ笑って白菜と椎茸を持って踊ってる。




奈歩ちゃんが壊れた?




「ママに会えて嬉しくて、おどちゃった。」




奈歩ちゃんありがとう。




奈歩ちゃんを乗せたカートを押して歩いていると、向こうから奈歩ちゃんと同じ年ぐらいの男の子を連れた、斗真が歩いて来た。




斗真が驚いて私を見ると、その男の子が斗真をパパと呼んだ。




「パパ、早く帰らないとママが待ってるよ。」




斗真に隠し子がいたの?





「明日美、キムチ鍋にはキムチが、あ、斗真。その子誰?」




宗次郎も驚いてた。




笑っちゃうよ。




笑うしかない。




斗真は何も言わずに通り過ぎて行った。




斗真はいつも残酷な事をするんだ。




いつも私を奈落の底に突き落とすんだから。




「宗次郎行こう、お腹ペコペコだよ。奈歩ちゃん早くお家に帰ろうね。」




明日美、このままでいいのか?宗次郎の言葉を無視して、急いで買い物を済ませた。




今は何も考えたくない。



早くこの場から逃げたかった。




斗真に隠し子がいただなんて、笑えないよ。



涙もでないや。