めちゃくちゃにこやかに、しかも騒々しく扉を開けたかと思うと…なにかが飛んできた。
しかもそれが顔面直撃。
カーンッといい音がした。
「あうっ…! あうっ…!」
「あ…当たった。すいません、想定外」
「う…! 嘘ばっか…!」
涙目で当たったところを押さえながら真裕父が嘆く。
中から聞こえた、しれっとした声は楓のものだ。
「そりゃ静かにしなかった僕も悪いけどさあっ」
「当然でしょう」
「真裕…寝てんの?」
「ええ」
そろりそろりと入っていく真裕父のあとを何気に追って入る俺達。
楓はベッド脇に腰掛けてなにやら資料を開いていた。
もう仕事をする余裕があるらしい。
てこたァ真裕のやつ、命に別状はねェってことだな。
「みわくんみわくん、真裕は?」
「ああ…大丈夫ですよもう。今はね」
「今は…というと?」
「絶対安静にしてないと、いつまたこうなるか分かりませんよ。体だけじゃなく…心も。ストレスをかけないであげてくださいね」
「そうか…やはりあの事故で…」
あれの影響が残ってんのか…。
まあそうだよな。
あの事故に遭って、子供も無事だったって時点ですでに奇跡に近い。
ここまで無事育ったんだし…なんとか元気に生まれりゃいいなあ…。
俺でさえそう思わずにはいられない。