「っ…だって母様認めてもらったことないよ…! ピアノでだって…まず藤峰が付いて回るんだもの! 常に藤峰家の嫁として相応しいかどうかで見られて…」
…初めて聞く話ではなかった。
お義母さんが亡くなってからというもの、真裕はたまに不安定になる。
夜…眠れずにずっと泣いて。
静かに、お義母さんのことを語る。
周りの想像以上に、真裕は母親の死というものに深く傷ついている。
そして今も…立ち直ることが出来ていない。
「最初から認められてるあなたとは違うの!!」
「…!」
『…!』
『マ…』
「…!? ご……ごめん…なさ…!」
無意識に出た言葉だったのか……自分自身とても驚いた顔で、目を見開いてそう言った。
大粒の涙が絶えず流れ出ていて。
また…こいつは苦しまなきゃならないのか。
そう思うと、怒りを通り越して哀しかった。
なんで俺は、一番大事なやつをいつも守れないんだろうか。
なんで……苦しまないで済む方法を、見つけてやれないんだろうか。
そんな思いが頭をよぎった。
「ちが…違うの…。そんなこと、思ってない…。ごめんなさ…!」
「…真裕…」
「だって…分かってるのに…。うちがこういう家だから…仕方ないって分かってるけど…! でもあたしにとって、母様は普通の母様だもの…!」
「分かってるよ…」
「…っ…」
顔を両手で覆って…俺の胸に押し付けてきた真裕を抱きしめた。
……はずだった。

