真裕の顔色が変わった。
じっとインターホンを睨んでいたその目に…初めて感情が映った。
『だからこのことを公表できなかったんですか?』
『藤峰さーん!』
『ひど…!』
思わず漏らしたハディの言葉がすべてを物語る。
…言い過ぎだ。あまりにも…。
無意識に眉を寄せ、立ち上がろうとした…その時。
「真裕! どこ行く気だ?」
『!』
「ま、真裕様…」
真裕が出口に向かって歩き出した。
思わず駆け寄り腕をつかむと。
「どうしてあんなこと言われなくちゃならないの? 昔からずっとお金目当てだとか言われ続けてきて…! 亡くなってまでどうして侮辱されなくちゃいけないの!!」
…振り返ったのは、激怒した真裕だった。
こんなに怒っているこいつを見るのは久しぶりだ。
自分の偽者が現れたとき…。
あのときも、お義母さんの悪口を言われたんだったか。
「こらえろ真裕…! 今行ったってしょうがないだろ」
「言わせとけって言うの!?」
「じゃあ今出て行ってどうなる? 何をする気なんだ?」
「なんにもしない! できないもん! だけど黙って言わせてなんかやらない!」
「真裕…!」
「っ…」
諭すように目を見ると、一気に涙を溢れさせる。

