しかし中途半端に隠す形になってしまった今、事態は複雑化している。
なぜ隠していたのか? やがてそこが、一番のネタになるだろう。
「…ふん。いいわ。ほっときなさい」
「し、しかし…」
「飽きるまで待つ。しつこいようならパリに帰るわ」
あっちのほうが警備が厳重だからと付け加えながら、肩にかけていたショールを翻して俺達に背を向けた真裕。
恐らく…戸惑っている。
仕方のないことだと分かっているだけに、怒ることもできないからだろう。
―ビーッ
「!」
『わっ…。え…?』
『…さん! 藤峰さん! 真琴さんが亡くなられていたというのは本当ですか?』
『え…?』
「…!」
インターホン…か…!
突如鳴り響いたブザー音のあと、記者と思わしき男の声が部屋に轟いた。
部屋の電話は、内線とインターホンとが一緒になっている。
たぶんさっき坂本さんか誰かがインターホンをとって、切り忘れたんだろう。
「も…申し訳ございませ…!」
顔を真っ青にした坂本さん…やっぱりそうか…。
『半年以上前に亡くなられていたとのことですが、なぜ今まで公表しなかったのですか?』
『なにか都合の悪いことでも?』
『噂では、日本の一般家庭出身の真琴さんには藤峰家の重圧は重く、失踪した末の自殺ではないかと言われていますが、どうなんですか?』
「…!!」

