「あ、そうだそうだかえくんねえねえねえねえっ」
「あん?」
「あのねーまおねー昨日ねー」
「うん?」
ひょいひょーいっと椅子を持ち上げては運び、机を担いでは運びを繰り返すかえくんのそばをまとわりついた。
「昨日みわ先生が来たでしょ?」
「ああ」
「そんで『やっぱり女の子だねー』って言ってたでしょ?」
「いや、俺そのときいなかったし」
「言ってたの。…そんでそのあとねーえ? これ読んでねって冊子を渡されたのよ」
「冊子?」
置いた椅子がぐらつかないことを確認してから、かえくんはあたしを座らせた。
そして自分ももう一つの椅子に座り聞き返す。
「うん。えっとねー、タイトルが確か…『妊娠&出産、子育てまでよぉく分かる本in藤峰家』。著者みわ先生」
「……」
「言ってやれよセンスないって」
「…別に思ってねぇよ」
うそつけっ。
引きまくった顔してたわ。
「まあ…タイトルはあれだけど、中身は普通だったのよ。お父さんへってページもあったよ」
「へえ…」
この人そういうの一つも読まないから…。
あたしは一応、本買って読んだりしてるのよ。でもかえくんは目も通さないの。
そろそろ勉強してもらわないと困るからね。

