まああたしが小さい頃から知っているんだから…当然なのかもしれない。
記憶にはあんまりないけれど、色んな人から聞けばあたしはだいぶ破天荒だったらしいから(今もそうだという自覚はない)。
「きっとかえくんもすぐお仕事終わらせて来るよ。急にスピード上がってたから」
彼もあれね。
目離せるかこのやろってことだろうね。
失礼な。
「さ、行きましょ行きましょ」
「わふっ」
もう可愛いんだから❤
「あ、そうだわ。中庭の桜がもう開いておりますゆえ、お茶でもお持ちいたしましょう」
「まあ❤お花見ね❤」
「はい! では私お茶の用意をして参りますので、お先に向かわれてくださいな」
「はーいお願いね」
坂本さんは、嬉しそうにいそいそと厨房へ走っていった。
ふふっ。お花見かー。
もうそんな時期。
あれから二年経つんだね…。
かえくん達と日本で出会ったときは、まさかこんな風に色々起きまくるとは思わなかった。
いきなり婚約発表されるし、人を好きになるってことをようやく初めて知ったかと思えば結婚させられてるし…。
それに…母様とも、会えずに亡くなってしまった。
だけどかえくんのおかげで耐えることが出来て。
乗り越えられないけれど、受け入れることはできたんだ。
そしてやっと平和に過ごせるかと思ったらあんな大事故だ。
あたしはバイオリンを弾けなくなり…彼は消息不明になり。
だけどそれを乗り越えたとき、あたしの中には小さな新しい命が宿っていて。
そして今を迎えるんだ。
「…長い道のりでしたね…」
思わず、お腹に語りかけた。

