俺が口を開きかけたとき。
さも不思議そうに、真裕が言った。
『え? この家の主はあたしじゃないよ?』
『え、そうなの? パパ?』
『なんで? かえくんよ』
『え"…』
『え、だって…え?』
お互いに不思議な顔をしている。
相手の言っていることが全く分かっていない。
しかしこの場合はメイリー達のほうが正しいわけで…。
『だってこの家はあたし達夫婦の本邸にあたるわけで…そうすると正式な五十一代目の夫としては、一家の大黒柱であらないと…?』
『そ……そうなの…?』
これもまた、この家の不思議な制度。
当主は長子と決まっていても、だからといって家の主がそうとは限らない。
いわゆる大黒柱的な存在は男だと決まっているらしい。
よく分からないが、まあこれも古い家柄のせいだろうと思うことにした。
『…あれ。お前なんか、どんどん偉くなっていってない…?』
『元々お前よりは人間的に上にいるつもりだ』
『それは自分を高く見てんのか俺を低く見てんのかどっちだ!?Σ』
少し考えれば分かることだろそんなの…。
『ところでマヒロ、お腹の子の調子はどう?』
『いいわよ。さっきちょうど胃にクリーンヒットして超びっくりしてたとこ』
『胃にクリーンヒットて! 超ウケるんだけど!』
相変わらず声もテンションも高い女子組。
これは仕事はこれ以上無理だと諦め、パソコンを閉じた。

