去年…こんなのいたっけ?
あー…んー……あたし人の顔とか声とか名前とか覚えるの苦手なんだよね。
「まっ、遠縁の親戚のお兄さんって覚えておいておくれ」
「はあ」
…何時間覚えてられるかはわかんないけど。
「時間単位Σ」
そう言って席の向かいに座った彼を見て、一瞬デジャヴのようなものに襲われた。
あれ、やっぱり見たこと…ある?
「??」
「どうした?」
仕切りに首を傾げるあたしにかえくんが心配そうに語りかける。
「ううん…」
前にも来てたのかもしれないな。
そう思い至って、あたしはそれ以上考えることをやめた。
「かえくん、ちかちゃんこれ食べれるかな?」
「食べれるかΣ」
「ええーっ…美味しいのに…」
…だけどこの時、もっとしっかり思い出していればよかった。
「まお、顔拭きなさい」
「ん。…あれ? さっきの変な人は?」
「知らん」
うわーそこまで徹底して興味ってなくせるもんなんだ。

