「さっそくだが紹介しよう! 楓くん楓くんこっちへ来たまえ」
嬉しそうにかえくんに向かって手招きする父様を見て、かえくんはというと、ものすごーく嫌そうな顔をしてあたしを見つめてきた。
だからあたしは……優しくて夫思いでうんぬんかんぬんのあたしは…。
「いってらっしゃい♥」
…と、背中を押してあげた。
「てめ…」
「はーい! これがかの有名な音楽界の貴公子こと、天才バイオリニスト星野楓くんです! 今は可愛い可愛い真裕の旦那様です! そしてつい最近産まれた可愛い可愛い僕の孫、真愛のおとおさんです!」
…ああ…、うざいなー…。
「おお! このような有名人をこんな間近で見られるとは!」
「僕も有名人で大物だよ、正司(しょうじ)くんや」
「や、これは失礼しました義兄さん! わはは!」
時江おばさまのご主人の正司おじさま。
系統が父様と似ているのが、唯一の残念なところかと。

