――……
「まおちゃん、これ持ってお行きなさいな」
「わあ! ありがとうママ!」
出発の日の朝。
お義母さまがそう言って差し出してくれたのは、まだあったかい手料理の数々。
「見て、かえくんおべんと!」
「あーよかったな」
「うんっ♥ まおね、おべんと初めて」
「だろうな」
「……かえくぅーん。なにしてんのー?」
「見て分かんねえかお前、荷造りだ」
はっ、そうか!
そおいえばそんなもの、しなくちゃならなかった!
どうりでさっきからかえくん、忙しなくしているはずだ。
「ほら、忘れねーうちにそこの袋入れとけ」
「はーい」
やっぱり日本の物って質がいいよね。
赤ちゃん用品買い込んじゃった。
いくつもになった買い物袋を、無理やりキャリーバックに押し込んだ。
「真裕ちゃんも真愛ちゃんももう帰ってしまうのか…。仕事だなんだと言うなら楓だけ帰ればいいものを。な! 母さん!」
「あらやだ! まおちゃーん、この子おしめみたいよー」
「……」
あんまり見事なまでの無視っぷりに、さしものお義父さまも撃沈。
この一週間、ずっとこんなだったなー…。
「こら楓。今度は男の子を連れてきなさい。ただしお前のようにひねくれてて可愛げの欠片もないような子は孫とは認めん! 認めんぞおおっ!」

