「ちゃんと持って入れ……バカそういう持ち方するからこぼれるんだ」
「んみぇっ…」
「急かしてんぞ」
「待ってちかちゃんごめんね!」
親子…?
「たく……」
一段落したのか、またため息をこぼしながら車から少し離れた楓。
相変わらずじっとまおちゃんを見張って…じゃなくて見つめている。
「ねえねえ楓ーそういえばさ、まおはどうなの?」
「どうもこうもああだ。アホのままだが?」
「そんなこと聞いてんじゃねーわよΣ てかどんな言い草Σ!?」
「じゃなに」
めんどくさそうに聞き返した楓に、花梨が珍しく珍しく真面目な顔をした。
「珍しくて二回言うなΣ! …そうじゃなくて、体調…っていうか精神状態っていうか……ほら、相当ダメージ受けてたみたいだから…」
「ああ…」
確かに、あの事故以来の彼女はこれまでとほんの少し違った。
なにがと言われると言葉にはしにくい。
だけどいつも不安そうな瞳で楓を見つめ、触れているとようやく安堵した顔をする。
これは事故より前にも何度かあったことだけれど、あれ以降はずっとだった。
「しばらく心療内科医を呼んでカウンセリングを受けた。今は一人でも寝られるくらいには回復したな」

