眉を寄せてため息をこぼす彼は、それでもすごく優しい目をしていて。
そんな顔を見てしまうと、そうはいってもやっぱりこいつも夫で父親なんだなと実感しざるを得ない。
「それ置いて、まず真愛の顔を拭け。真っ白じゃねえか」
「あらやだΣ」
「車…………は蓮二のだからほっとけ」
「待て」
今なんてったかなあの男は。
聞き捨てならない一言に思わず突っ込んだ。
「わかった」
「まおちゃん……」
分からないでほしかった。
ほしかったけど…この子が楓の言うことを聞かないはずがない。
素直で可愛いけどね。
「ドンマイ蓮二」
「きっと仕返しよ。運転させられたから」
「へえ。案外子供みたいなとこあるんだね楓くん」
思いっきり皮肉を込めて言ってやったっていうのに、彼は二人の世話で忙しいらしい。
聞いてすらいなかった。
「……フッ」
「大丈夫蓮二?」
にやにや笑う花梨がすごく恨めしいのはなぜだろうか。

