――蓮二サイド――
「すみませんねー」
そう言って車の中に引き返すまおちゃん。
へらへらっと笑う顔は今までとまったく変わらない。
「お母さんなのねぇ…ミルク飲ませるんですって聞いた?」
「痛いわッΣ! 痛いわボケッΣ!」
改めて実感する僕らをよそに、しれっとした顔でじっとまおちゃん達を外から見つめる楓。
まるで…。
「なにかやらかすんじゃないかと気が気でない顔だね」
「当然だ」
「いやいやミルク飲ませるだけでなにをやらかすのΣ?」
「お湯をこぼして火傷するとか粉をばらまいて半泣きになるとか色々あるだろ」
「あるんだΣ」
完全母乳ではないらしく、今は粉ミルクを作っているらしい。
あんまり慣れた手つきじゃないあたり、実に彼女らしい。
「まーそれにしてもあんたって本当変わらないわよね。妻子があるようには到底見えないわ」
じろじろと楓を見つめながら呟く花梨の言うことはもっともだ。
顔立ちや容姿もさることながら、纏う雰囲気がとてもじゃないけど家庭のある男ではない。
「ただのアイドルやんお前」
「そうよーまおはそうはいってもさすがに母親らしくなっ…」
「あーっ! かえくんかえくん助けてーっ。やーんもーきゃー!」
「……あれ、修平その服蓮二のじゃない?」
「ああ、今朝こいつのクローゼットから引っ張り出して…」
「いや、なかったことにしてやるなよ。そしてお前は勝手に何をしてるんだ」
「言わんこっちゃねえ。ばらまきやがって…」

