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「かえくーん! お風呂湧いたんだけど、真裕ちゃん……入れるかしら」
「入れ……ねえなぁ…」
こいつほとんど一人で風呂入ったことないし。
俺と住み始める前までは、真琴さんと入るか…坂本さんに手伝ってもらうか。
それが、まして自宅ですらなく慣れない庶民の風呂となれば入れようはずもない。
「…って失礼な! 入れるもん!」
「ほお。一人で?」
「えっ……う…うん」
「んじゃ早く入ってきな」
「え? まおが最初に入るの?」
「ほらほら、早くしないとお湯が冷えちゃうわ!」
「え、あ、いただきまーす」
急かされたことに焦ったのか、流されやすい単純さのせいか、押し付けられるように渡されたタオルを抱きしめて、洗面所へと足を向けた。
「まお」
「んあ?」
「滑んなよ頭打つなよ水かぶんなよ。それと…」
「いや親かΣ 心配のしどころもおかしいだろΣ」
「…それと、着替え、忘れてんな」
「…Σ」
なにか?
真っ裸で出てくる気かお前は。

