ぐずぐずとすすり泣く真裕の長い髪を、取り出したゴムで束ねた。
「ほら。もう泣くな」
「うん…」
「おまえ、面倒見がいいんだなぁ…意外と」
「将来この子にもしてあげられるいいパパになれるかもよ」
せめてかもとか言うなよ。
「かえくん、まお束ねるの、似合う?」
少し嬉しそうにしながら聞いてくる真裕に、「ん、似合う似合う」と返して立ち上がらせた。
「さあさ、真裕ちゃんこっちへ来て。材料は昨日買い揃えたから色々あるわよ。なにを作りましょうか」
「んー……お料理分かんない」
「そーねー…じゃあ定番の日本食を色々してみましょうかね! 今朝いただいたお刺身もあるけど、あなた達おつまみにでもする?」
「そーいえば楓と飲んだことないな。よし、人生で一度くらいは父子らしいことをしてみようではないか!」
いや……人生で一度って、言ってて悲しくならねえのか。
しかもそれそんなに父子らしいことなのか?
突っ込みたくなったものの、まあ愉しそうだし好きにさせてやるかと思った。
なんせ、突然海外の妻のもとへ住み着いたかと思えば生死不明なんてものになったりし、その後一度もまともに顔すら見せなかったわけで。
まあ……親不孝というかなんというか。
そんな自覚はそれなりにあったからな…。

