―――……
それから数時間…。
戻ってきたお兄ちゃんは、半泣きであたしに言った。
「な、何事も起きませんでしたあぁ!」
「分かってるわよ」
「は、はいぃっ。お騒がせして申し訳ございませんでした…」
「ほんとだわよ」
「楽しんでたくせに」
「楽しんでないわ!? いやあね失礼ねかえくんたら!!」
ま…やっぱりというかなんというか、ひとまず何事も起きなかった。
これでもし本当にばれてたりなんかしたらさすがに許せないわよ。
仕事をミスるってうちじゃ許されないの。
人間だから間違うことくらいあって当然だけどね。
そういう次元じゃないからねもうね。
「念のため…と言ってはなんなのですが、警備班はこちらに残らせておきます。いつ何が起こるか分かりませんゆえ…」
「またミスする気?」
「ととととんでもございません! 二度とこのようなことは致しません!」
「当然よ。職なしになりたくなかったらね❤」
神崎家の人間がうちをクビになったら、家からも追い出されるだろう。
最悪とはこのことだ。
カチャ…とカップを置いて、血の気の引いた顔をするお兄ちゃんから顔を背けた。
ちょっといじめすぎたような気もするけど、平穏な時間をあれだけ邪魔したんだ。
ま、このくらいいいでしょ。
「さ、琥珀、梨音、紅葉、おいで。もうお部屋に戻ろうね」
「……」
「……」
「……」
「……おい」
「……声色声色」