「まあそれだけの話。二人とも超焦ってはいたけど、実際確率としては二十パーセントに満たないと思うよ。ばれてる可能性」
「あんたもクビだなんだと騒いでたよ…」
「なんか言った?」
「別に」
「ふーん…? ……ま、お兄ちゃんだってそこまでドジじゃないから。だってそんな無能うちが雇うわけないじゃない。ましてあたしが側に置くわけないじゃない。あはは」
もうそういう仕事の管理とかマネジメント以外になんっっの取り柄もないんだからさ?
神崎家の人間のくせに使用人として執事業務一個もできないし、車の運転させれば寿命一年は縮むし。
騒がしいしウザいし料理壊滅的に下手だしウザいし…。
「よく考えたらなんで側近にしてるんだろう」
「なあ…。なんか俺あの人かわいそうになってきたんだけど…」
「…まあああは言ってても、それなりに大事にはしてるみたいだけどな…。ただあいつ、たぶん根本的にはものすげぇ冷静で淡白なんだよ」
「いや、ああいうのは冷静で淡白じゃなく冷淡っていうんだよ」
「結局一緒だろ。漢字組み合わせただけじゃねぇか」
「なんとなくその方が冷たい感じするだろ」
「冷たい必要ねぇだろ。大体あれのどこを見て誰が冷たいとか思うんだよ」
「思わないからあえて冷たそうな言葉にするんだろ」
「逆にかけ離れすぎてて信じねぇだろ誰も。真裕に似合うのはせいぜい“馬鹿っぽい”、むしろ“馬鹿”、あと“可愛い”、くらいなもんだ」
「全部おかしいしΣ “むしろ馬鹿”とか、あんたら夫婦お互いなんでそんな失礼なんだよ。そして最後にノロけんな」
…なにこそこそしてるのかしら。
珍しいなぁ…。いつの間にあんなに仲良くなったのかな?
やっぱり…。
「春だから…かな…」
「あれでもか? あんな悟りが開けたみたいな顔で空に向かってわけ分かんないこと満足気に言ってても可愛いのか?」
「あれは馬鹿っぽい部分だ。そこが可愛いんだよわかんねぇやつだな」
「むしろあんたが馬鹿だよ…」
うん…きっとそう…!
春だから…!

