「ぬはあっΣ! ま、負け…!?」
「くっくっ…」
衝撃を受ける真裕を背に、ようやく部屋をあとにした。
「毎度毎度出るまでがなげーのなんの……」
まあ、俺があいつに甘いせいだろうけど…。
甘やかし過ぎちゃまずいか?
いやでも、あいつの場合突き放して成長するタイプでもないしな…。
つーかもとはといえば育てる段階であの義親父がこれでもかってほど甘やかしたのが元々だろ。
よし、俺は関係ねぇ。
勝手に自己完結して満足し、待ち構えていた野木さんの車に乗り込んだ。
「ヘリポートまでお車で向かい、そこから自家用機でロンドンまで向かいます」
「お願いします」
「お嬢様…………のご誕生はまだ時間が?」
今絶対真裕のこと「お嬢様」って言おうとして無理矢理変えたな。
おかげでちょっと野木さんらしくない言い回しになってんぞ。
「みわ先生は、今週中に産まれなきゃちょっと考えると…」
「そうですか…。真裕様はお体が弱くていらっしゃるから、心配ですね」
「まあ……」
確かに、難産になるかもしれないと言われたときはどうしようもなく不安になった。
真裕はその時、もしなにかあっても絶対に子供を優先しろと言った。
でも実際そうなったとき…俺は、そんなことができるだろうか。
真裕を失うなんてことは考えたくもない。
でももし……そのために子供が死ぬようなことがあれば、あいつは一生俺を許さないだろうし、自分を許さないだろう。

