――楓サイド――
「…いってらっしゃいぃぃ」
「なんだその顔」
「べえっつにぃ~?」
ある朝、仕事が入り出て行こうとすると、いつも以上に不満そうな顔をした真裕。
不満そうというより…なにか、嫌味のようなものまで感じる。
「予定日を三日過ぎて、いつ我が子が産まれてもおかしくないっていうのにロンドンですって。ロンドンですって。…大事なとこなので二回言いました」
「……」
いや…どこにどう突っ込んでいいのやら。
「明日までには戻るって」
「ロンドンだよ? ここ、カナダだよ? ロンドンだよ? ここ、カナダだよ? …大事なことなので二回言いました」
「……」
その二回目、いるのか?
「いい子して待ってな?」
「…うん…………いや待ってΣ!? それはせめて赤子に言ってΣ!? 帰ってくるまで待つんだよーとかさ!」
「……。帰ってくるまで待…」
「復唱せんでいいわいっΣ」
仕方ねぇなっとに…。
小さくため息を吐きながら、ベッドの上にいる真裕のもとまで行き、軽くキスをした。
「いい子して待ってな?」
「Σ」
「大事なことだから二回言ったんだよ」

