もう長いこと、自分の足先を見ていない気がする。
あたしの想像以上に大きくなるんだもの。
「これほんとに元に戻るのかなー」
「中に入ってるものが出てくりゃそりゃあ…」
「いやいや中に入ってんの、あんたの娘だよ」
まあそのときはそのときだな。
とりあえず産まないことには始まらないわけだし…。
なんか相当痛いって聞いたし…。
…………。
「い、痛いの…?」
「いや今さらか。そしてそればっかりは俺は一生分からん」
「どうしようどうしようそこまで考えてなかったよ……!? 果たしてこのあたしにできるのだろうか!」
「普通考えるだろΣ どうなってんだよあんたら夫婦はよ…」
なんかちょっと急にドキドキしてきちゃったよ……。
もうすぐだと思うとまたねぇ……。
「……もうすぐだってどおしよう」
「急に焦ってないで、とりあえず座れ」
「待て待て待て。座るのはおかしいだろ」
「どこがおかしい。なんのための電車の優先席だ」
「色々違うΣ! まず意味が違う!」
面白い。
なんか分かんないけど最近の二人は面白い。
時々会話の八割方内容が理解できないけど、それでも面白いのだからなかなかだと思う。
静かに言い合いを繰り広げる二人を、あたしはソファからじーっと眺めていた。
「……口の悪いところは似てはダメですよ。女の子なんだから」