「なんとか聞き出した名前から、私は彼のご両親について調べたんだ。すぐヒットしたよ。加納家の名前が。そしてお母様が再婚されたこともね」
「……」
俺はなんの反応も出来ずにただ、無駄に高級感の漂うテーブルを睨みつけていた。
「なんでこんなところにいたのかとか、聞くことはたくさんあったけれど、彼をしばらくうちで預かることにしたんだよ。私はね……」
嘘だろ…。
朝陽が藤峰家に…?
思わず口をついて出そうになった一言。
続いた真裕父の言葉で、一気に冷めて言葉を呑んだ。
「私は…! 実はちょっと息子も欲しかったから…!」
「……」
「小生意気だけど可愛かったんだよ! 養子にしちゃおうかと思ったくらい…!?」
…この人本当に、真面目な話真面目に出来る人なんだろうか…。
「まあでもその頃彼は十一で、本人の意思もあるし、『これ以上世話になるわけにはいかない』という彼の意向を汲んで三ヶ月ほどで施設へ行ってしまったがね」
藤峰家から施設…。
俺と違って、ずいぶんいい生活をしたみたいだな…。
「それ以降のことは知らなかったんだ。勝手にプライベートを探るわけにはいかないから、それきり連絡もしあうことなく…十年が経った。なぜ、今さら彼の名前が出てきたか分かるか?」
分かるわけがない。
そうだ。そこが一番の問題だ。
十年も経ってなんで今さら、アイツのことなんて調べたんだ?
そう思って、無言で首を横に振った。
それを見て、真裕父はこう言ったんだ。
「楓くんを撃った犯人が、彼――朝陽くんだったからだ」

