「…真裕が確か、七歳八歳くらいだったかな。バイオリンの才能が開花して天才少女として名を馳せ始めた頃でそれはもう愛らしくて愛らしくて今のようなひねくれた冷たさがなかったためにそれはもう可愛かった」
「……」
「そんなある日ね、師匠のもとへ勉強に行っていたあの子が、なんと男の子を連れて帰ってきたんだ」
「はあ…」
話が読みづらい上にいきなり親バカから入りやがったな…。
若干聞く気を失いながらも、一応、真裕父の言うことに耳を傾けた。
「当然我々はその子はなんだと問うよね。でも真裕のやつ、その頃からすでにこう…なんというかざっくりしてたんだ。『知らないけどうちの前にいたから無視して入ったらついてきたの。でもめんどくさいからまいっかなって』…って」
「……」
それは…ざっくりというんだろうか。
思わず突っ込みそうになったものの、真裕の頭の中なんて真面目に考えるだけ無駄なのでとりあえずスルー。
あんなもん、びっくり箱みたいなもんだ。
楓のやつほんとよく扱いこなすよなー…。
なんてことを考えていると、真裕父はまた口を開く。
「それを聞いて、あ、こいつに聞いたのは間違いだったと我々が気付くのに時間はかからなかったよ。すぐにその少年に聞いた。しかしね、なんとも小生意気な子で……そう、ちょうど君のような」
「…そりゃすみませんね」
「お母さんは? と聞くと、その子は無愛想に言い放ったんだ」
『…そんなのいないよ。俺達邪魔なんだって』

