ー真裕サイドー
「ハア……」
「? …あ、甘いよこのみかん。食べる? はいあーん」
「いやまだ食べるとも食べないとも言ってねえよ」
「ほら早くぅ」
「……」
まったくどうしちゃったのかしらこの人ったら。
さっきから小難しい顔しちゃってさ、差し出したみかんなんて上の空で受け取るから、受け取ったそばから紅葉に奪い取られてる。
しかもそれに気がつかずにいるみたいだし…。
「かえくぅん?」
「お前さ…ほんとに意味分かってんの?」
「なにが」
「てめさっき自分で言ったろうがああ?」
「んにゃ!?Σ かえくんが怒った!」
そりゃあわかっていますとも。
だけどさ…あたしたぶん、分かってた。
想像ついてたんだとおもうな。
父様にそのことを言われて、とっさに思ったのが「やっぱり」だった。
自分でも驚いたよ。
だって自覚はなかったもの。
彼のことなんてそう何度も思い出したりしてすらなかったし、第一そんなに恨まれる覚えもなければそんな人でもなかった。
だけど……。
「あたしと武藤真緒が一致することができて、そもそもあたしが日本にいることも知ってて…って人、そういないから。彼なら納得って感じかな」
ショックじゃなかったわけではない。
十年も前のことだし、あんまり覚えてないけど…少なくとも人を傷付けたりするような子じゃなかった。
最初の落書きなんかは納得できる。
なぜなら彼は非常にユニークな性格というか、あっけらかんとしていてひょうきんだった。
「まあ一言で言えばバカって感じ?」
「……」
だからあれはやりそうだなって思うわけ。

