――真裕サイド――
「う~ん、もうそろそろだね!」
にこにこと嬉しそうに言うのはみわ先生だ。
あたしは臨月を迎え、よろめきそうなほど大きなお腹を抱えていた。
「名前、決めた?」
「ううん…なんにも考えてない」
「…少しは考えたら?」
「…そおする…」
そうだった…。
名前を考えなきゃいけないんだった。
すっかり忘れていた。
一番重要なことだったわ。
「楓くんは今日お仕事なの?」
「ううんー大学」
そう。
かえくんは意外にも、真面目に大学に通っている。
いつかキレて行かなくなるんじゃないかと期待していたあたしとしては少し残念…い、いやいや。
「でも今日はお昼には帰ってくるって! だからまお行かせてあげたの」
「行か…行かせてあげた?Σ え、それは行かせないときがあるってこと…」
「あらやだ失言。…笑顔で見送ったの❤」
「…楓くんって大変だろうなぁ…」
うんうんそうね。
お仕事と大学と藤峰家、全部こなさなきゃいけないんだもんね!
うんうんそうね!
「きっとお仕事より大学より藤峰家にいることより、真裕ちゃんの旦那っていう役目が一番大変だと思うな!」