「あ…でも」
「あ?」
思い出したように、ユウキが口を開いたときだった。
―ヴーッヴーッ
「…あ?」
「いや携帯にキレたって仕方ないんじゃ…」
家から…か?
真裕じゃないな。てことは…。
「もしもし?」
『あ、か、楓様っ…あのお忙しいかと存じますがその…真裕様が…』
「なにか?」
やっぱりか…。
電話の相手は坂本さん。
わざわざかけてくるってことはあいつなにかあったか?
『真裕様が先ほどお倒れに…! あっ、あっでも先生に来ていただきましたので大事には至りませんでしたが、体調が優れないようですし一応お知らせをと…も、申し訳ありませ…』
―ピッ…
「? どうかしたのか?」
「帰る」
「……は?」
あいつまた…。
顔色の悪い真裕が目に浮かんで、思わず立ち上がった。
『おや? どこに…』
ちょうど入ってきた講師にそう聞かれたが、『妻が倒れまして』とだけ口早に伝えてそのまま出て行ってしまった。

