――楓サイド――
「んふ❤」
「……」
結局、一切れ二千五百円以上もするようなものを三つも買って、目の前で食べようとする真裕。
たったこれだけで一万円は高すぎにもほどがあると思うのは俺だけだろうか。
藤峰家に入ったからには、こういう感覚に慣れないといけないのか。
「……いや、慣れるべきではないだろ…」
「なにが?」
「別に…」
「? いる?」
「いやちげーよ」
つーかお前、それ結局俺の財布から出てんだぞ。
いやまあ関係ないけども。
「ねえねえあのねえまおねえ、自分のお洋服を買いに行きたいな」
「死ぬほどあるのに? 家に服専用の部屋まであるのに?」
「ワンピースが欲しいんですぅー。意外とお腹が大きいんですぅー」
「死ぬほどあるのに? ワンピース専用のスペースまであるのに?」
「……」
…金があると、必要性には目を瞑るようになるんじゃないかと思う。
「だって…なんかもうちょっと、お腹の目立たないようなのが欲しいなって…思っただけだもん…」
思いっきり唇を突き出しながらフォークでザクザクケーキを切りつける様子は本当にまるで子供だった。
「別に…ダメとは言ってねーだろうよ」
「えっ❤」