「…じゃあ食べ放題とかバイキングでいいわよ」
「なんでお前自分が妥協した気でいるんだよ」
ぶーっと唇を尖らせながら、下向きに歩くあたしの姿はさぞ子供に見えることだろう。
しかし心配はいらない。
なぜなら私が子供に見えても私の腹にはさらに子供がいるからだ!
「便利! 妊婦超便利!」
「いやなに利用価値を見出してんだΣ」
「あたしあと一年くらいこのままでいるね」
「できるもんならな」
わあいやだ。
負けた気がする。
なんかものすっごい負けた気がする。
「あ、そういえばかえくん、あれなんだったの?」
「あれ?」
野木さんの待ち構えていた車に乗り込んで、ふと思い出して聞いた。
「うんあれ」
「どれ」
「これ」
「ああ…。……いやお前なんでそんなもん持って…」
あたしが取り出して見せたのは、父様のアホな顔の写真。
勘違いしないでおいてもらいたいのが、こんなもの好きで持っているわけではない。
断じて違う。父様が送ってきた封筒に入っていたのだ。
なぜそれを今持っているのかというと…。
「…まあ、出し忘れたんだよね。鞄からね」
「……」

