「今日は寒いですね」 「そうですねぇ……」 遠くを見つめるようなおじいさんを真似るように和輝も空を見つめていた。 「待ち合わせですか?」 にっこりと笑顔で語りかけてくるおじいさんに、和輝は「ええ、まぁ。来てくれるかは分からないんですけど」と苦笑しながら正直に答えた。 「おじいさんも待ち合わせですか?」 「ええ。昨年までこの時期は何かと忙しかったんじゃが、引退してのぅ。年甲斐無く妻とデートでもしようかと思い出の場所で待ち合わせを」 照れた様子で話すおじいさんに和輝は自然と好感が持てた。