今日は久し振りの2人の食事であった。


まさかフラれたなんて想像もしていなかったので、来月のクリスマスの予定を何気なく聞いたのだ。



(拓人をフルなんてどこに不満があるのよ。贔屓目かもしれないけど、容姿よし、頭よし、運動神経よし、加えて優しい人なんてそうそういないわよ。)



さっきまでは、また2人で食事ができると思って喜んでいた美希だが、だんだんと拓人を振った相手に対して腹が立ってきていた。



皿を洗い終え、手を拭くと2人分のコーヒーを入れ始めた。


コーヒーの芳しい香りがリビングに漂う。


この香りを嗅ぐうちに、興奮気味であった美希の気持ちは少しずつ落ち着いていた。



いい匂いのするカップを拓人の前にコトンと置くと、美希は2人掛ソファの空いてる方へ腰かけた。


「お、サンキュウ。美希」


「ねぇ、こんなこと聞くのもなんだけど、なんでフラれちゃったの?」


「あぁ…………、うーん……俺がはっきりしなかったから悪いんだよ。彼女には悪いことしたなって反省してる」


答えになってないじゃん、と苦笑しながら突っ込んだ美希だが、それ以上は聞けなかった。


辛そうな、何か考え込んでいるような、そんな複雑な表情の彼に追求してはいけないように感じたのだった。