「ゆう……す、け…………?」


「うん」



柏木はにっこり微笑むと携帯電話を閉じた。




そして、席を立ち、まだ携帯電話を耳に当てたまま信じられないという顔をしている香澄にゆっくりと近づく。


「本当に優介なの……?」


「そうだよ」


「本当に?」


「本当」


「夢じゃない?」


「ははは、夢じゃないよ」



だんだんと近づく顔が、本当に自分が待ち望んでいたその人であることを示していた。



香澄ははっきり見えてくるはずの顔がどんどん滲んでいくのを感じていた。


耳から携帯電話を外され、濡れていく頬にそっと手が添えられる。


「これでちゃんと見える?」



「……うん…………」



「ずっとずっと好きだった。付き合って下さい」



香澄は唇にかかる息を感じながら、「はい」とだけ答えるとそのまま唇を塞がれた。