「実はアドレスも消せてないの。本当に未練がましいですよね……」 声のトーンがどんどん沈んでいく香澄に対し、少し高揚している柏木が「そんなことない!」と叫んだ。 いきなり大声を出されて驚いた香澄に「すみません」と柏木は一言謝り言葉を続けた。 「僕も実は似たような境遇で…………あなたの番号はそのままなんですか?」 「え、ええ。変えてないですね」 「そうなんですか……」 柏木はそのまま口を閉じた。