「そういえば…………香澄……どうしてます?」
出されていた料理を半分くらい食べ終えたころ、少し聞きにくそうに柏木は質問した。
奥さんは気づいてないのねと心の中で思いながら、「そうねぇ……あの子もめっきりこなくなっちゃったから……」分からないわとでも言うように言葉を濁した。
「そうですか……5年も経ったしきっと結婚とかしてるんだろうな…………」
(結婚……?)
香澄は結婚という言葉が耳に入り、目を覚ました。
(ああ……わたし寝てたみたい。飲み過ぎたかな)
香澄は突っ伏していた頭を上げ、顔を洗ってこようと立ち上がった。
自分のバッグを置いていた席の右隣にいる男性、柏木には目もくれず、中からハンドタオルとクレンジングシートを出すと柏木を背にカウンター奥にある化粧室へ向かった。


