少し時間が経ち、奥さんが香澄を起こすため声をかけようとした時、ガラガラと扉が開き、男性が一人入ってきた。
背が高くすらりとした体型、端正な顔立ち、周りがほっとかないであろう容姿の男性。
「おっ!」
「あら、まぁ」
オーナーと奥さんはその男性を見るなり、思わず声を上げていた。
「お久しぶりです」
男性がにっこりと微笑むとそこは一瞬にして優しい雰囲気に包まれた。
奥さんは、男性を香澄がコートを掛けている席の横へ座るよう促した。
男性こと柏木優介(かしわぎ ゆうすけ)は案内された席に座り、「とりあえず生一つ」と言って奥さんから受け取ったおしぼりで手を拭いた。


