「行き付けだった居酒屋に行ったらいいと言ってたな……あの、占いのおじいさんを信じていいのかよく分かんないけど、どうせ一人だし……久しぶりに行ってみようかな」
香澄は元カレとよく行っていたお気に入りの居酒屋に向かって足を早めた。
見慣れた看板が目につき、玄関の引き戸を開けた。
「いらっしゃーーい」
お店の中から威勢のいい声が発せられた。
「おじちゃん、こんばんは。開いてます?」
「おう、嬢ちゃんか。久しぶりだねぇ。見ての通り開いてるよ」
こじんまりとした店構えのこの店はオーナーのおじさんと、奥さんの二人で切り盛りしている。


