「お嬢さん、今晩、その彼と行き付けにしていた居酒屋に行ってごらんなさい。きっと良いことがあるじゃろう」 香澄が代金を払おうと財布を出すと、「代金はいらんよ」と笑顔で言った。 (本当にいいのかしら……) 香澄はそう思いながらもお礼を伝えるとその場を後にした。 するとすぐに、「幸せになぁ」と言う声がかすかに聞こえ、振り向くとそこに居たはずのおじいさんはもう居なかった。