「すり傷だけみたいですね。他に痛いところとかありませんか?」
「ええ、大丈夫ですよ。親切にありがとう。君は優しいお嬢さんじゃな」
長く伸びた白髪の髭で口は隠れているが、目をくしゃっと細めている姿から心から笑顔になっていることが分かる。
「わたし、優しくなんかないですよ……」
美希は力無く微笑んだ。
「何かあったんじゃな。こんな老いぼれたじじいでも良ければ話を聞くぞ?」
普通なら初対面で、素性も分からないような人に話をしないだろう。
しかし、美希は何故か話を聞いてもらいたいと感じた。
優しそうなこのおじいさんに……。
「2年前のクリスマスイブの話なんですけど……」


