「じゃあ、またな」

そう言って帰っていく広い背中に、さっきまで背負われていたんだと。

早く帰れと思うのに、いざとなれば少し淋しくて。

先生がムカつくのは、別に嫌いだからじゃないのかもとか。


先生に触られたせいでますます熱くなった頭で考えた。




「…せんせ、ありがとう…」


あたしがもう一度言えた時、扉が閉まる直前で。

でも、振り返って笑った先生が少しだけ見えた。



風邪を引いた私を心配する先生。

あんな優しい眼差しを向けられて。

あんな優しい手つきで撫でられて。



ピアスの存在が、痛く感じた。