授業開始10分。

「今日は随分早いですね。」

先生が私のところに来ると、周りはお喋りの時間を得たとばかりに話始めるので、それはもううるさい。

そんな喧騒の中でも、先生の鼻にかかった低い声は、なぜかよく通った。


「起きなさい、佐藤」
…せんせ、ゆらさないで…。


頭では思っているのに、言葉には出来ない。

先生が私の肩を掴んで、前後に振るから、頭が…。


「……いたい…」


私が絞り出した声は。

「おい、大丈夫か!?」


机に突っ伏したまま、顔を伏せたままなのに、先生には届いたらしい。