数学準備室から出た私は、真っ直ぐに自分の家へと帰ってきた。 そして、ベッドにうつ伏せになりながら呟く。 「…せんせ、…すき…」 相手の幸せを願えるようになったのは、私が大人になったからなのか。 それとも、それほどまでに好きになっていたからなのか。 私はそれから、自分の涙に溺れてしまうのではないかというほど泣いた。 涙もやがて枯れ果てた。 そうして、私はやっと、左の耳に光る赤いピアスを外した。 戒めを解く意味ではない。 先生を必要以上に思い出さないために。