なぜか懐かしさまで感じる、茶色の木製ドア。

ここに立つとやはり、少し緊張する。
何に対してなのか、どうしてなのかは自分でも分からない。

躊躇して、ノックをしようとした手が動かなくなった。

しかし、それはほんの一瞬。

次の瞬間にはもう、コンコンと小気味よい音がなった。

「はい、」

分かってはいたものの、中から聞こえた声に少し戸惑い、私は、動けなくなる。

ああ、もう、なんで。
さっきまでの決心はどこに行ったのだろうか。
ピンポンダッシュならぬコンコンダッシュでもしてやろうか、なんて、バカげたことを考えた時だった。