眠たいわけではない。 どちらかと言えば、知らなかった事実に戸惑い、受け止めきれなくて、目は冴えすぎているのだが。 ただ、茫然としてしまうだけ。 どうやら、この動揺は決していつものようには言い返せないほどらしかった。 佐藤の影すらなくなった教室の片隅で、いつかあのピアスをつける理由を聞いてみたい、なんて思った。 なぜか、佐藤の思い詰めたような横顔が俺の中でわだかまりとして残ったからだ。 あの時は、まだ、佐藤の心に誰かが巣食っているなんて、思いもしなかったんだ…。