パタン、と静かに閉まった扉をただ茫然と見る。

頭の中で、リピートされるのはこの前のような笑顔じゃない。

さっきのあいつの泣き顔ばかり。



ほんの少し、からかってやるつもりだった。

泣きそうになるほど、大切なんだなって。

それと同時に。

何でそんなに大切にするのか、疑問だったから。
赤い左耳だけのピアスでなくてはいけない理由が知りたかった。


しかし、その理由に。
きっと、醜い嫉妬だった。

あまりにも、当たり前のように言うから。

『好きだった人からもらった、おそろいのピアスなんです』