そして私は、左耳のピアスに触れる。


恋なんてもうしない。

そんな自分への戒めの意味で付けているピアスなはずなのに、これじゃあまるで逆効果だ。



いつか、先生が付けてくれた時の冷たい手を思い出す。

そして。


先生の匂いを思い出して、私の胸はまた変な音をたてる。

先生のそれは、甘くて苦い、恋のような匂いだと気づいた。



甘酸っぱいイチゴの匂いに混ざった、煙たくてほろ苦いタバコの匂い。

私が覚えた、先生だけの匂いだった―――。