「…う…、…さと…、」


ふわふわと夢の中に漂う私の意識を、引き戻そうとするのは、誰だろうか。


「…さとう、佐藤!」


少し低い、鼻にかかった声。
怒りを滲ませているはずなのに心地いい。


「おい、佐藤 美桜」


あぁ、とうとうフルネームを呼ばれてしまった。


てことは。

あぁ、とうとう…。


ポカンッと間抜けな音と、軽い鈍い痛みが私の頭を襲った。



仕方ない。

これだけ眠りを邪魔されたら、もう寝てなんていられない。



「ほら、起きなさい」


そんなこと、お見通しと言うように、目覚めを促される。