「どうしたの?! だいじょうぶ?」
汚れた床に座り込む玲子に、栄治が心配そうに駆けよってくる。
「……平気。ちょっと左膝にきただけ。いつものやつだよ」
玲子は、無理のしすぎを告げる古傷の痛みに顔をしかめながら、
やっぱり誠に会いに行けばよかったと後悔している自分を認めた。
誠の不在が、まるで毒のように全身を侵していた。
両腕で頭を抱え込んだ瞬間、頬に涙がゆっくりと伝っていく。
あの熱い眼差し、ゆったりとした気配、潮焼けした声、節高な指先……。
なんでもいい。
とにかく誠の一部を感じなければ、陸に上がった魚のように無残に干からびてしまいそうな気がする。
