長野に向かう鉄平の背を見送ったその日、玲子は見事に失敗続きで、
オーダーを何度も間違えた末、最後の客にはお釣りを渡し忘れるということまでしでかした。
誠のことをあれこれと考えてしまう自分を、どうしても抑えることができないのだ。
「玲子先輩、お疲れっす。ちゃんと間に合ったよ。謝っといたから大丈夫」
ダッシュで客を追いかけてくれた栄治が、息をはずませて戻ってくる。
「……ごめん。ありがとう」
玲子は、どうにかそれだけ言うと、厨房の床にへたり込んだ。
誠が発って以来張り詰めていた神経が、ついに限界をむかえていた。
