「ね、まこ兄、いつかこの映画みたいに、2人で世界中の夏を追っかけようね」
そして玲子は、涙をふきながら傍らの誠に囁いたのだ。
昔、いっしょに美味いもん出す店をやろうね、と、
そっと指きりをしたときのような気持ちで。
誠が笑顔でうなずいてくれることを、欠片も疑いもせずに。
「ごめんな、俺は行けない」
だけどそのとき玲子の耳に響いたのは、きっぱりとした拒絶の言葉だった。
驚いた玲子は、畳に寝転ぶ誠を振り返った。
西日が斜めに差込み、誠の白いTシャツをオレンジ色に染め上げていた。
そして玲子は、誠がその日焼けした顔をゆがませて、
胸の中で荒れ狂うなにかを抑えていることに気づいたのだ。
どうして、と言いかけた言葉を、玲子はとっさに飲み込んだ。
